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誰でもわかる 生物学的に美味しいと感じる味覚 Topic.1

味覚の嗜好性。遺伝的要素と環境的要素

遺伝的要素

遺伝的要素として、「甘味」・「塩味」・「酸味」・「苦味」・「うま味」の5つの基本味で形成される味覚には、生きていくために必要なものを識別する「信号」としてそれぞれ異なる重要な役割を担っています。それは食べ物が有益なものか、有害なものであるかを伝えるシグナルです


「甘味」 : エネルギー源のシグナル。エネルギー源である糖の存在を知らせる


「塩味」 : ミネラルのシグナル。体液のバランスに必要なミネラル分の存在を知らせる


「酸味」 : 腐ったものや未熟なもののシグナル。腐敗している、果物などが未熟であることを知らせる


「苦味」 : 毒の存在を知らせるシグナル


「うま味」 : タンパク質のシグナル。体をつくるのに必要なたんぱく質の存在を知らせる


「甘味」・「塩味」・「うま味」は、人間が生きていくために必要不可欠な栄養素であるもののシグナルで、甘いケーキや塩味の強いフライドポテトなどもともと本能的に好んで食べる傾向があります。一方、「苦味」や「酸味」は、毒物や腐敗物など身体に悪そうなもののシグナルで、苦みの強いピーマンや酸味の強い酢の物などもともと好んでは食べない傾向があります。 

環境的要素(経験的要素)

母乳・ミルクの栄養主成分はエネルギー「甘味」、たんぱく質「うま味」、ミネラル「塩味」で人間が生きていくために必要不可欠な栄養素であるもののシグナルで構成されています。食べると快楽が生まれ、「病みつきのおいしさ」です。


また毒物や腐敗物など身体に悪そうなもののシグナル「苦味」や「酸味」に敏感な子どもが初めてのその食べ物を経験する場合、子どもの脳はこれまでに受けたことのない情報としてとらえ、「異物」=「危険なもの」=「不快」=「嫌い」として判断してしまう確率が高くなります


しかし、一旦「苦味」や「酸味」をもったものでも自分に害を及ぼすことはないという確信が得られれば、怖がる必要はなくなるので食べることができるようになります。これがおふくろの味に代表され、続けて食べることで生まれる「安心のおいしさ」。環境的要素(経験的要素)です。  

味覚の発達と美味しさの記憶

ヒトは食事の経験を積み重ねることによって、「いつもの味」=「食べられる味」=「美味しい」と判断が変化していきます。子供の頃の拒絶していた「嫌い」な食べ物も永久的とは限りません。「小さい頃嫌いだった食べ物も、気づいたら好きになってた」ということが起こります。豊かな味の学習によって得た経験が味覚を広げて食べることの楽しさの範囲を広げていきます。


また「美味しい」と感じる要素は「味」だけではありません。食材の見た目の色、切り方などの形や大きさ、硬さなどの食感や舌触り、調理したニオイなど様々な情報を5感を使い脳に取り込んで、それが「美味しい」と感じる構成要素になっています。中でも五感のなかでも最も原始的と言われるニオイは重要な要素。美味しい焼肉・焼き魚などお店の前でニオイでつられたといった経験がある思います。食べ物の記憶の大半は「香り・ニオイ」といわれ、ニオイ成分は鼻の奥にある細胞から直接脳に伝えらるため、味覚よりも正確と言われています。こういった5感を使った食事の経験を積み重ねることによって子供の嗜好から大人の嗜好になっていきます 

・ 味覚の鈍化

味の感度「閾値(いきち)」は加齢とともに変化し、感度が低下する傾向があります。またタバコ、刺激物によっても衰えると考えられています。 

・ 嫌いな食べ物の心理的な記憶

美味しいとはを5感を総動員し、総合的な感覚で判断しますが、「強要されて辛かった」、「叱られて笑われた」等、子供の頃経験するとその記憶がトラウマとなり、食べることが難しくなることがあります。大人になっても心に残り、もともと嫌いだった食べ物に対するイメージがずっと心の中に残り、その食べ物を楽しむこと自体をしなくなります。「責める」・「無理やり」「厳しい罰」が将来の食事をつまらないものとしてしまいます。調理方法を変えるなど少しずつ食べられるように工夫をしつつ、食事を楽しむ方法を見つけていくことが大切です。  

食べず嫌い

自分の「嫌い」な食べ物の理由として、「食べたことがないから」といった理由を挙げる人が結構いますが、当たり前の話ですが、どんなものでも試しに食べてみないと、どんな味がしてどのように美味しいのかわからないものです。家族の好き嫌いの影響などで、家庭の食事が偏っていたりすると先入観から食べず嫌いになることがあります。人は行動や体験を通して様々な経験をし、学習することで成長しますが味覚も同様です。興味や関心をかきたて食べたことがないものを食べることは学習のひとつです。   

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