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誰でもわかる 生物学的に美味しいと感じる味覚 Topic.1

個人差のある味覚感受性

個人差のある味覚

ヒトは食べ物を食べたとき、舌でその食べ物に含まれる化学物質の一部を味として感じます。これが「味覚」です


食べものの味を感じる小さな器官「味蕾(みらい)」は数十個の細胞がタマネギ状に集まったような形をしていて、ヒトの場合、舌の上皮に多く存在しています。味蕾の細胞においては、甘味や苦味などの基本味が受容され、1つの細胞には1種類の味覚受容体しか発現していません。違う味は別々の細胞で受け取られています。


この基本味を呈する味物質を認識する受容体「味覚受容体」は、2,000年にマウスから初めて発見され、多くの哺乳類、鳥類、魚類などでもその存在が確認されています。人間においては甘味受容体は1種類、苦味受容体は25種類存在しています。味覚受容体のアミノ酸配列の違いによって、味物質への感受性が大きく変わる例も知られています。


現在、味覚受容体遺伝子の研究によって遺伝子レベルでの違いがも存在することら明らかになっています。ヒトの味覚・味覚の鋭さには個人差がありますし、動物によっても味覚の感じ方は異なります。ネコは甘味を感じませんし、ヒトでは苦味物質の一つであるフェニルチオカルバミド(PTC)を感じることができません。これを味盲といいます。 

年齢によって変化する味覚

味覚受容体(レセプター)の遺伝子に変異があると、その受容体に特異的に結合する神経伝達物質(リガンド)との親和性が変わることがあります。これによって味の感度「閾値(いきち)」も変化します。閾値には味が有るか否かを認知する刺激閾と、他の味との区別が出来るか否かを示す認知閾があります。閾値は加齢とともに変化し、感度が低下する傾向があります。またタバコ、刺激物によっても衰えると考えられています。ただし年を重ねると様々な食に関する経験から味覚を補う事もできるようです。 

住む地域によって異なる味覚

ヒトの遺伝子にはヒトによってそのヒトの個性を決める先天的に小さな変異が無数に存在しています。人口の1%以上の頻度で存在する遺伝子の変異、遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差のことを遺伝子多型といいます。また遺伝子多型は味覚感受性に関しても同様で、味覚は人種や住んでいる地域によって傾向が異なります。先天的にヒトの味覚において、「苦味」は毒のシグナルとして感じています。ヒトの苦味受容体は、人種や住んでいる地域によってどのような苦味物質と良く反応するかが異なっているといわれています。「その毒と接する頻度が多かったから」、「生き延びるためにその毒を見分ける必要性があったから」と考えられています。 

日本と異なる海外の味覚

日本はの消費量は世界の年間漁獲量のほぼ2分の1とも言われ世界第一のイカ消費国。イカやタコは東アジアや地中海付近では食べられてますが、世界的には珍しく、欧米諸国でもタコとイカは不吉な生き物とされ、食べるのを嫌がる傾向にあるそうです。スルメいかの焼いた匂いもヨーロッパ人には苦手な方も多いです。また日本で高級食材とされているマツタケは、スウェーデンでは兵士の靴下の臭いニオイだとされ、牛蒡は欧米人からすると日本人は木の根を食べていると驚かれます。 

生物によって異なる味覚

「味蕾」の分布は動物の種によっても異なます。ヒトの味蕾は花のつぼみのような形をしていますが、主に舌(舌乳頭)に存在する数が最も多く、舌、口蓋、咽頭にに広く分布しています。ヒト味蕾の数は個人差が大きいのですが、口腔内に約8,000 〜10,000個あるといわれています。そしてナマズは体表全域に約100,000個の味覚受容体細胞が分布していますし、チョウでは前足に分布しています。ナマズは全身で味わい、チョウは足で味わっています。味蕾はひとつつひとつがすべての味を感じることができ、味をキャッチすると味覚神経を介して脳に信号が送られて味を感知します。 

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