食材のスカウトが簡単解説不思議な世界

誰でもわかる 生物学的に美味しいと感じる味覚 Topic.1

日本人の知恵。日本古来の自然のうま味製法

寒仕込み(寒造り)

日本酒の仕込み方のひとつの名称、「寒仕込」は、気温の低い冬場に仕込むものをいい、「寒造り」ともいいます。


江戸時代初期までは四季を通じて、「四季醸造」と言われる技術によって、「新酒」、「間酒(あいしゅ)」、「寒前酒(かんまえざけ/かんまえさけ)」、「寒酒(かんしゅ)」、「春酒(はるざけ)」と年に5回、酒が造られていましたが、寛文7年(1667年)、当時もっとも酒造技術が進んでいた伊丹で、それまでの寒酒の仕込み方を改良し、この寒造りが確立されました。そして、延宝1年(1673年)、徳川幕府は酒造統制の一環として、寒造り以外の醸造が禁止するに至り、その結果「四季醸造」は衰退への一途をたどり、「寒造り」が醸造法の主流となっていきました。


寒造りが主流となったことにより、酒造りは冬に限られた仕事となったので、農民が出稼ぎとして冬場だけ酒蔵の最高製造責任者の「杜氏 (とうじ/とじ)」を請け負うようになって、各地にそれぞれ地域的な特徴を持った「杜氏」の職人集団が生成されていきました。自然な低温環境である冬を利用して、中小の酒蔵ではさかんに寒造りがおこなわれていますが、それを造る「蔵人(くろうど)」たちにとっては、冬場の早朝の作業は大変な仕事となっています。


「四季醸造」は昭和になって、工業技術と空調設備によって復活しましたが、「醪づくり(もろみづくり)」などのいくつかの工程において、効果的な酵母の活動を促すためには、こちらも低温であることが望ましいとされています。

寒干し

「寒干し」とは、東北地方の野菜の保存方法で、干し野菜の中でも寒風にさらした「寒干し野菜」は、冷たい空気によって味がキリリと引き締め 、うま味と栄養を野菜にぎゅっと閉じ込めることにより、 美味しい とされています。 寒干し野菜 には、地方のよって特色がありますが、大根、にんじん、れんこん、しいたけ等きのこ 類、さつまいも 、白菜、ごぼう等があります。


作り方 は、寒くて少し晴れ間がのぞく程度の時期が最高ですが、軒下等家の中でも風通しの良い場所に、2日間干しておくとできあがります。雨・雪にあたらないよう湿気を避けて、乾燥した冷たい空気にさらすことで、水気が抜け良い乾燥 効果 が得られ、保存は、新聞紙等にくるみ、冷蔵庫の保存の必要がありません。 節電・停電中でも保存ができます。生野菜より保存期間が長い ことも特徴となっています。


調理の上で寒干しは、肉や調味料の味をよく吸ってくれて、野菜本来のうま味も強いので、調味料の節約にもなり、塩分を気にしている方にとっても、身体にやさしい料理を作ることができます。

寒ざらし

「寒ざらし」は、白玉粉で作った小さな団子を、湧水等の冷水で冷やし、蜂蜜や砂糖、蜜をかけたもので、団子の食感が何とも言えないくらいに、口の中でとろけそうに柔らかくて、モチモチしっかりしていて、上品なあっさりした甘さと喉越しの良い素朴な味の食べものです。


「寒ざらし粉はもち米を精白し、年間でも最も寒さが厳しいこの時期の寒中に30日間水にさらし、水切りの後、原料に水を加えながら石うすで挽きます。乳液上になったのを圧搾 し、乾燥させてできあがります。主に和菓子の材料、求肥(ぎゅうひ)、団子、外郎(ういろう)に利用され、今ではそばやうどんそーめん等の製法にも応用されています。


完璧な寒ざらし粉は虫が付きにくいそうです。近年の温暖化現象で、餅米を桶やバケツに水を張っただけで寒ざらしにしても、中々うまくいかなくなってきています。

最高のうま味をもった食品に出会いたいなら